思春期に個人差はつきものですが、早い遅いが気になった時にチェックすることをまとめました
「女性のからだのワーク」で出た質問にお答えします
11月2日に開催された「女性のからだのワーク」では、思春期についてもお話ししました。思春期は、身体的には第二次性徴がおこり、感情的な面でも変化が出てくる時期ですが、その時期は個人差があります。
個人差とは言えない「早すぎる」年齢について質問が出ましたので、ここに回答をまとめます。
通常より2-3年早いと「思春期早発症」を考える
通常では、思春期の変化は、女の子は10歳頃、男の子は12歳頃よりはっきりします。2〜3年程度早く始まってしまう場合に「思春期早発症」と診断されます。
「うちの子、早すぎ?」と心配なときは、以下の点を確認してみましょう。
女の子の場合
- 7歳6ヵ月より前に乳房が発育してくる
- 8歳より前に陰毛が生えてくる
- 10歳6ヵ月より前に月経(生理)が発来する
男の子の場合
- 9歳より前に精巣が発育してくる
- 10歳より前に陰毛が生えてくる
- 11歳より前にひげや声変わりを認める
典型的には、上記の項目のうち2つ以上に当てはまる、あるいは1つだけ当てはまるが年齢不相応に身長が伸びた、などの条件を満たせば思春期早発症と診断されます。もし、身長が低いにもかかわらず、このような症状が見られたときには、診断基準年齢を1 歳高くして、治療を考えることもあります。
思春期早発症で問題になることは、
- 早期に体が完成してしまうために、一時的に身長は伸びるが、最終的に低身長になる
- 幼い年齢で乳房・陰毛、月経などが出現するために、本人や周囲が戸惑うことがある
- まれに、早期に思春期をおこしうる腫瘍などの疾患が原因のことがある
です。
上記の基準に当てはまりそうな場合には、適切な診断、治療を受けるために、専門の小児科医を受診することをお勧めします。
二次性徴が遅いときは「性分化疾患」も考える
性分化疾患とは、性分化(性染色体の情報に基づき精巣や卵巣が発育し、男女それぞれに特徴的な性器が作られること)のステップの何らかにトラブルが生じ、性染色体、性腺、内性器、外性器が非典型的である生まれつきの状態に使われる用語で、多くの疾患(体質)を含む総称です。
生まれた時、外性器の見え方で性別を判断しますが、その時に判断しにくかったため診断につながることが多いかもしれません。
しかし、生まれた時には気づかれず、思春期後半の年齢になっても二次性徴が見られない、あるいは進行が遅いことで見つかることもあります。
「うちの子、遅すぎない?」と心配になったら、以下の点をチェックしてみましょう。
男の子の場合
- 14歳になっても精巣が大きくならない
- 16歳になっても声変わりしない
女の子の場合
- 13歳になっても乳房が発育しない
- 15歳になっても月経(生理)が発来しない
これらの項目に当てはまるようでしたら、思春期早発症と同様、専門の小児科医を受診されることをお勧めします。
誰に相談したらいいの?―内分泌代謝科(小児科)専門医
思春期早発症や性分化疾患は、内分泌代謝科を専門とする小児科医に相談するのがお勧めです。内分泌とは、身体内のホルモンのことをさします。第二次性徴だけでなく、成長障害、小児の糖尿病などの治療にあたっています。
専門の先生をお探しの場合には、日本小児内分泌学会のホームページを参照してください。患者さん向けのQ&Aもわかりやすく書かれています。
日本小児内分泌学会HP
産婦人科医として補足しますと、「乳房や陰毛の発育はあるのに月経がまだ」という女子中高生を診察することが時々あります。
一般的な産婦人科施設でも、外性器の状態を目で見て確認し、血液検査でホルモン値を調べ、腹部超音波検査でおなかの中の性器の状態を確認することが可能です。
「月経だけまだ」という場合、これらの検査で異常が見つからず、必要に応じた薬物治療だけで対応できることがほとんどです。
一方、検査で気になる異常があれば、専門医を紹介することになります。
専門の小児科医を探して受診するのは難しいこともあるかもしれません。
初めに相談する窓口は、お近くの小児科でも産婦人科でも(男の子さんなら泌尿器科でも)構いません。受診科についても、お子さんの気持ちを尊重してお決めください。