知床のヒグマから「社会全体で子供を育む」ことに思いいたる
知床のネイチャーガイドさんが教えてくれた、ヒグマの育児放棄
世界自然遺産である知床は、その豊かな自然が魅力的です。
しかし、野生のヒグマの生息地でもあるため、その散策にはちょっとした配慮が必要です。ヒグマに遭遇しても近づかない、絶対に餌をやらない。
ヒグマは、母グマが単独で子育てをします。冬眠中に出産後、子グマを守り、餌を与え、餌の捕り方を教えます。
子グマを見かけたら、必ず近くに母グマがいます。不用意に子グマに近づくと、母グマが子グマを守るために攻撃してくるので、絶対に近づいてはならないそうです。
知床の大自然を満喫するために、ネイチャーガイドさんに案内してもらった時、こんなお話をお聞きしました。
ある年、知床五胡を散策するツアーガイドをしていた時のこと。
母グマを発見したので退避しようとすると、近くに二匹の子グマもいることに気づきました。親子グマの間に立つという、絶体絶命の危機!
しかし、その母グマが襲ってくることはありませんでした。母グマは、子グマを守る行動に出ない、「育児放棄」状態だったのです。
その後も、この兄弟グマは度々目撃されましたが、まだ上手に餌をとることができないまま、最後には餓死してしまいました。なぜ、母グマは育児放棄をしたのでしょうか。
知床オプショナルツアーズSOT!ガイド 鈴木謙一さんのお話
その年は、餌が非常に少ない年でした。新米の母グマは、自分が生きていくのに必死で、子グマたちの育児まで力が及ばなかったと考えられます。
また、弱っていく様子を目撃していても、相手は野生動物です。安易に保護することはできません。
人間社会ならではの、社会的養護を社会全体で
私たちの周りでも、自分自身が生きていくのに必死で、育児にまわす余力がない親がいるかもしれません。その結果、大切に育てられるはずの子どもたちが虐待を受けているかもしれません。
でも、私たちはヒグマと違って野生動物ではありません。社会は、適切な保護をする力を持っているはずです。親を責めるだけでは解決にはなりません。
今回、小鳩まつりに参加し、初めて児童養護施設を訪れました。
施設の職員さんたちの優しくあたたかな姿勢、小鳩まつりを盛り上げるボランティアさんたちの熱心な姿、里親さんと一緒に興味深く赤ちゃん人形を抱っこしてくれた子どもさんの笑顔。
すべてがとても印象的でした。
同時に、社会的養護の現状や難しさも教えていただきました。
日本の出産・育児をとりまく環境には、問題が山積しています。養育が困難であるために、支援を必要とする家庭が少なくありません。また、厚生労働省によると、昨年度の児童相談所における児童虐待相談対応件数は133,778件とこれまでの最多件数となりました(2018年8月30日発表)。
社会的養護は、「子どもの最善の利益のために」と「社会全体で子どもを育む」という理念で行われています。
子育て支援も同様ですが、「社会全体で子どもを育む」価値を社会全体で共有できるようになりたいものです。
今後も、こばと子ども家庭支援センターの活動に協力していきたいと考えております。
知床の自然に触れるなら
知床オプショナルツアーズSOT!では、知床五湖をはじめとした知床の豊かな自然を案内してくださいます。
上記のエピソードの他にも興味深いお話をたくさんしてくださった、ベテランのガイドさんによるツアーにご興味がある方は、こちらまで。