あなたの「がん家系」が遺伝するかは、家系図で見きわめる

前回から、9月7日にWACCAで開催した「女性のからだのワーク」で取り上げた話題を共有しています。参加された方も、そうでない方も、チェックしてみてください。

「私の父方はみんな、がんで亡くなっています。がん家系なんです。がんって遺伝しますか?」
という質問を受けました。

「がんが遺伝する」とは?

「がんが遺伝する」というとき、それは遺伝性のがんをさします。
病的な遺伝子変異を生まれつきもっているために、遺伝的にがんに罹患しやすくなり、その素因がもとでがんを発症します。つまり、「がんになりやすい体質」を引き継ぐことを意味します。
では、遺伝性のがんの可能性があるのは、どんながんでしょうか。
2つのいわゆる「がん家系」と言えそうな家族の家系図を例に考えてみましょう。

神戸家家系図
神戸さんの家系図
兵庫家家系図
兵庫さんの家系図

神戸さんの家系図を見ると、①いろいろながんになっています。②多くの場合、がんになったのは50歳以上です。
一方、兵庫さんの家系図では、①大腸がんばかり、同じがんにかかっています。②若い年代でがんになっている人がいます。
遺伝するがんの可能性があるのは、兵庫さんの家系です。
見きわめるポイントは、

  1. 若い年齢でがんになる:目安は50歳より若い
  2. 同じ種類のがんいかかった人が家系の中に複数いる
  3. 同じ人が何度もがんにかかる:転移ではなく原発で
  4. 特定の種類のがんが家系内に見られる:乳がんと卵巣がんの組み合わせなど

です。

「がんになりやすい体質」とは、どんなものでしょうか。

組織を構成する細胞は、必要な分だけ増えたら、もう増えることをやめます。このストップがきかなくなっているのが癌細胞です。増え続けてしまうわけです。
通常は、がん抑制遺伝子やがん遺伝子と呼ばれるような制御の機能を持った遺伝子がうまくコントロールしているので、細胞が増えすぎることはありません。
このうち、増えることをやめるブレーキの働きをしているのが、がん抑制遺伝子です。

両親から引き継いだ2個をセットで持っているのですが、2個ともが変化して働かなくなるとブレーキがきかず、細胞がどんどん増えてしまうわけです。
本来、この2個の変化が起こるまでには長い時間がかかります。しかし、1個が生まれつき変化してしまったものだったらどうでしょう?
早くに、すなわち若くにがんにかかってしまうわけです。
また、がん抑制遺伝子やがん遺伝子とよばれるものは何種類もありますが、同じ遺伝子が生まれつき変化しているため、同じタイプのがんができやすくなります。
この遺伝子の変化のことを変異と言います。「がんになりやすい体質」とは、変異した遺伝子を持っていて、それを受け継いでいる(いく)ことを意味します。

「がん家系かも」と心配に思ったら

「がん家系かな」と心配に思う方は、神戸さんや兵庫さんのように家系図を書いてみましょう。そして、上記の見きわめポイントをチェックしてみてください。
そのうえで、遺伝するがんの可能性があると分かった場合は、どうしましょうか?

まずは専門家に相談することをお勧めします。
国内の遺伝相談実施施設については、例えば「いでんネット~臨床遺伝学情報網~」のサイトに情報があります。認定遺伝カウンセラーなどの専門家が対応してくれます。

がん予防は、日ごろの生活から

日本ではいま、一生のうちに、2人に1人は何らかのがんにかかるといわれています。そのうち、遺伝性のがんはおよそ10%程度です。
遺伝するがんより、ふだんの生活の中にひそむ発生要因の方が大きな影響を与えています。日頃の生活でがん予防に心がけ、がん検診で早期発見を目指すことが大切です。

がん予防5カ条

  1. 禁煙する
  2. 食生活を見直す
  3. 適正体重を維持する
  4. 身体を動かす
  5. 節酒する