あなたの月経痛がひどいのは、子宮内膜症が原因かもしれません
皆さんは、「ブルーデー」という言葉をご存じですか。月経(生理)の日を意味するのですが、実は和製英語です。ブルーには「憂うつな」という意味があります。和製英語を作ってしまうほど、私たちは月経を憂うつなものと感じているのかもしれません。
憂うつになる理由はいくつもありますが、そのうちのひとつが痛みです。
月経は、子宮が収縮して経血(生理の血)を出そうとするので、どうしても痛みを伴いがちです。実際、8割程度の女性が月経時に痛みを感じています。
あなたは、「月経は痛いものだから仕方がない」と思っていませんか。痛みを我慢する必要はありません。痛みで日常生活に支障が出ないよう、鎮痛剤を使いましょう。
一方で、「痛み止めを飲んでいれば大丈夫」と思っている方もいらっしゃいます。しかし、ひどい月経痛には病気が隠れていることが少なくありません。下記にお示しするセルフチェックで、当てはまる項目が多い方は「子宮内膜症」の可能性があります。一度、婦人科を受診なさってください。
- 生理痛がひどく鎮痛薬を使う
- 生理痛がひどく日常生活に支障がある
- 生理時に頭痛や吐き気もある
- 徐々に生理痛が悪化している気がする
- 生理期間以外にも下腹部痛や腰痛がある
- 便をする時に痛みが強い
- セックスをする時痛みが強い
- なかなか妊娠しない
- 尿に血が混じっていることがある
- 便に血が混じっていることがある
- 原因不明の気胸になったことがある
(厚生労働省研究班監修、ヘルスケアラボより引用:http://w-health.jp/self_check/self_check_04/)
子宮内膜症って、どんな病気?
子宮内膜症とは、本来なら子宮の内側にある子宮内膜組織が子宮内ではなく卵巣やお腹の中などにできる病気です。子宮内膜症ができる場所は、子宮や卵巣、その周囲だけではありません。セルフチェックに「気胸」が含まれているのは、肺にも子宮内膜症ができることがあるからです。肺子宮内膜症になると、毎月のように気胸を繰り返すことがあります。
子宮内膜は、月経周期に合わせて増殖し月経としてはがれることを繰り返します。子宮内膜症がある部位も、子宮内膜と同様に増殖します。そして月経期に出血を繰り返します。出血した部位が治る過程で周りの組織とくっついて癒着したり、古い血液が卵巣内にたまったりして(チョコレート嚢胞)、月経期だけでなく月経でない時にも痛みの原因となります。
月経のたびに出血するので、月経を重ねるごとに悪化する可能性があります。悪化すると、痛みの原因になるだけでなく、不妊症の原因になることもあります。また、チョコレート嚢胞は、まれにがん化することがあります。
現代の女性は、月経(生理)の回数が多すぎる
私たちは、一生涯の間に何回の月経を経験するのでしょうか。
初めて月経を迎えるのがおよそ12歳前後、閉経して月経がなくなるのが50歳前後です。全期間を通して毎月順調にあったと仮定すると、月経回数は500回を超えます。
2回妊娠して2回出産した場合、その期間は月経がないので50回程度少なくなる計算になります。
では、昔の女性はどうだったのでしょうか。たとえば、私の義母は6人兄弟ですが、6人出産した義母の母はおそらく妊娠中や産後の授乳期を合わせると10年以上は月経がなかったはずです。単純に推測しても100回以上少ない計算になります。ちなみに、明治維新の頃は、50~100回程度しかなかったのではないかとも言われています。
つまり、現代の女性は昔の女性に比べると、月経の回数が圧倒的に多いのです。月経のたびに悪化する可能性がある子宮内膜症は、生涯に経験する月経回数の増加に伴って増加傾向にあります。
子宮内膜症は、どうやって治療する?
増加傾向にある子宮内膜症ですが、月経がある女性の5~10%が罹患していると言われています。しかし、子宮内膜症ときちんと診断されている女性はそのごく一部です。子宮内膜症が原因で月経痛などに悩んでいるにもかかわらず、治療を受けていない人が少なくありません。
子宮内膜症は、月経がある間に完治するのは困難ですが、治療法を選択しながら上手に付き合えれば痛みに苦しまずに過ごすことができます。がん化などのリスクを下げるためにも、必要な治療を受けてほしい病気のひとつです。
治療方法は一つではありません。症状や病気の重症度などに応じて選択します。
- 薬物療法
- 鎮痛剤:軽症の場合は、鎮痛剤で痛みをコントロールすることから始めます。
- ホルモン剤:低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬やGnRH拮抗薬、黄体ホルモン剤を用いて、症状をやわらげます。
- 手術療法:子宮内膜症の病巣がはっきりしている場合には、その部位を取り除く手術を行うことがあります。
最近は、使用できるホルモン剤の種類が増えてきました。それぞれにメリット・デメリットがあるので、状況に応じた使い分けが必要です。各治療方法の説明を聞き、あなた自身の希望や考えを主治医に伝えたうえで、最善の治療方法を選んでいきましょう。
少しでも快適な月経期を過ごそう
子宮内膜症がなくても、月経痛や月経前症候群などの月経トラブルはQOL(生活の質)を下げます。仕事や家事などの日常生活に支障をきたすこともあります。月経に関する症状でつらいことがあれば、産婦人科を受診してみませんか。
月経痛があれば、子宮内膜症と同様に低用量エストロゲン・プロゲステロン配合薬でその痛みを和らげることができます。ホルモン剤を使用しない・できない場合にも、漢方薬などの治療が可能です。子宮内膜症以外にも、子宮筋腫などの治療が必要な病気が見つかることもあります。
月経は、女性の体の大切なバロメータです。とは言え、痛くてつらい月経に耐えなければいけないということはありません。500回近く経験するかもしれない月経期間を少しでも快適に過ごしましょう。あなたの「ブルーデー」が憂うつなブルーに染まってしまわないために。
最後に
この投稿は、「シンママStyle」というサイトに掲載していたコラムを一部修正したものです。
最近は、子宮内膜症が妊娠・出産に関連する病気のリスクも上げるのではないか、と言われるようになってきました。月経時の痛みが強い方は、「まだ妊娠は先」と思っていても、産婦人科で相談してみてくださいね。
謝辞
「シンママStyle」は2021年9月末をもって閉鎖されることになりました。「シンママStyle」の編集長をはじめとして編集部の皆さんには、Mimosaの活動理念にご賛同いただき、コラムを書く機会を与えていただきました。
また、Mimosaのホームページ読者の皆さんの健康にお役立ていただくため、コラム原稿の再掲を快くご承諾くださいました。ここで改めてお礼を申し上げます。