「幸せな性」についてお話ししました

3月18日は、福性寺で性カフェを開催しました。

いつもに増して寒さが厳しかった冬が終わり、やっと温かさを感じられる日が続いていましたが、当日はあいにくの雨。
足元が悪い中参加してくださった皆さん、ありがとうございました。

性カフェでは、参加者の皆さんと一緒に「幸せな性」について語りました。
一人ひとりが自分の幸せについて話し、お互いがそれを聞くことによって、幸せの輪が広がったように思います。

以下に、性カフェを通して皆さんにお伝えしたかったことをまとめました。

「幸せな性」のために必要なこと

「性」と聞くと、「恥ずかしい」とか「いやらしい」というイメージが先行してしまうかもしれません。
しかし、「性」とは、本来、私たちの命や身体と切り離せない、大切なものです。

その大切な性を大切に扱うことが、幸せにつながっていくと私は考えています。
「幸せな性」の実現のために、まず「性」を大切にしましょう。

「性」とは?

性器や体つきなどから判断する生物学的な性(セックス)、自分が男性であるとか女性であると認識する性(ジェンダー)など、「性」が意味するものは一つだけではありません。
これらは、自分が自分自身であるためのアイデンティティの一部をなします。誰もが尊重し、尊重されるべきものです。

また、女性に限った話では、第二次性徴が始まり、月経が起こる。妊娠・出産を経て、やがて更年期を迎える。一生の間に、このような身体の変化(精神的な変化も伴いますが)を遂げますが、これも「性」にまつわるものです。
すなわち、子どもを産み、子孫を残すという、「生殖」に関わる身体の仕組みの一環として、一生にわたるダイナミックな変化があるわけです。

「性」と「生殖」。
今回お話しした「幸せな性」は、「性」と「生殖」に関する幸せを意味します。

「性」を大切にする

それでは、「性」を大切にするためにはどうしたらいいのでしょうか。

今回、「性」を大切にするために必要なこととして、3つのことをお示ししました。

  • 「性」に関する正しい知識を持つ:正しい知識は、自分のカラダやココロを守る武器になります。
  • 自分自身の状態・状況を意識する:自分のカラダやココロがどうなっているか、注意深く観察する機会を持ちましょう。
  • 知識を活かして対処する:自分自身の状況にあった対処をとるために、持っている知識を活用しましょう。

「性」に関して「恥ずかしい」イメージばかりが強くなると、正しい知識を得られなかったり、自分のカラダを意識することを避けてしまったりしてしまいます。
まずは、「性」と「生殖」に関する正しい知識を持って、「恥ずかしい」だけではない側面に目を向けましょう。

性交(セックス)の役割

「性」の中でも、性交は最もプライベートな行為のひとつです。
「恥ずかしい」「いやらしい」のイメージは、このプライベート性からも来るのでしょう。

ここでは、「幸せな性」の実現を助けるために、性交の持つ意味をご紹介しておきましょう。

  • 生殖:子どもを産むために必要な行為として、ヒトは性交します。
  • 快感:性別に関わらず、性交には基本的に快感を伴います。
  • 共感:性交という非常にプライベートな行為を相手と行い、ともに快感を得ることで、お互いの愛情を感じたり安心感を得たりします。

生殖だけや快感だけに偏った捉え方をしてしまうと、「幸せ」が置き去りになってしまいます。
どの役割も大切です。大切な相手とともに、お互いが幸せであると感じられるような性交ができれば、「恥ずかしい」を超えたイメージにつながります。それこそが、「幸せな性」です。

私たちは、一人ひとりが尊い存在だ

最後に、私たちの命の尊さについて、お話ししました。

私たちの命のスタートは、受精卵1個。大きさは髪の毛の太さ3本分くらいの本当に小さなものです。
それが、お母さんの胎盤から栄養をもらって3kgくらいの大きさまで育って産まれてきます。
まさに「お母さん、すごい!ありがとう!!」ですよね。

でも、すごいのはお母さんだけではありません。胎盤は、実は赤ちゃんの細胞から作られています。栄養や酸素のやり取りをする場所はお母さんと一緒に作り上げますが、胎盤は私たち自身が作っているんです。
「生まれる前から、私たちもすごい!」わけです。

それだけではありません。

私たちのスタートである受精卵も、奇跡が重なってできています。

受精卵は、命のもととなる卵子と精子が出会って(受精)できます。
卵子は、お母さんの体の中で数百万個作られます。そのうちのごくわずかが排卵して、妊娠の機会を待つことになります。私たちの命は、その中のたった一つがもとになってできあがっています。

精子も、お父さんの体の中で常に新しく作られ続けています。一度の性交では約1億個の精子が射精されます。
精子は卵子と出会うために腟・子宮・卵管の中を泳ぐように進むわけですが、受精卵よりずっと小さいサイズの精子にとって、その道のりは非常に険しいものです。
やっと卵子の周りに到達した精子は、協力して卵子の殻を溶かします。そして、一番最初に卵子に入り込めた精子が受精してできあがるのが受精卵です。

本当にたくさんの卵子と精子のうちの一つずつが、奇跡的な出会いを経て一緒になり、私たちの命はできあがりました。それだけで十分尊いと私は感じます。

私たちは、みな、尊い存在なのです。

尊い存在が生まれる過程としての性交も、やはり尊い営みと言えるのではないでしょうか。

性カフェを終えて

「性」について他の人と一緒にお話しするのは、生まれて初めてだったという方もいらっしゃるかもしれません。それでも、ご参加くださった皆さんのご協力を得て、安心してお話しできる場を作ることができました。この場を借りてお礼申し上げます。

中丹地域に来て産婦人科医として感じていることの一つに、産婦人科を受診するハードルの高さがあります。
産婦人科の数も少なく、交通の便もよいとは言えず、どちらかと言うと比較的高齢の男性医師が多い環境では、産婦人科を受診するのは私が想像する以上に大変なことなのかもしれません。

Mimosaの活動は、そのハードルを下げることを目指しています。
「あ、こんなことを聞いてもいいんだ」「ちょっと受診してみようかな」
そう思っていただくためにも、産婦人科医と気軽にお話しする場を作りたいと考えてきました。

今回の性カフェは、そんな場としての役割を果たせたと自負しております。
今後もこのような場を設けていきますので、ぜひ一度足をお運びください。Mimosaの活動に関するご案内はLINE公式アカウントで行っておりますので、友だち登録をお願いします。

LINEでは、可能な範囲でのご相談やご質問もお受けしています。ご活用ください。