婦人科がん検診、これだけは知っておこう!
Hikare’最後のLoveAging講座も、楽しく学んで終えることができました
去る2月18日、ワンピースHikare’でLoveAging講座を開催しました。
「女性ホルモンと月経」のシリーズ2回め、「月経のしくみとその異常」をテーマにお話ししました。
不正出血などの気になる症状がある際に婦人科を受診していただきたいのはもちろんですが、異常がなくても定期的に受けていただきたい婦人科がん検診についてもお話ししました。
ちょっとしたトリビアもまじえて、お話しした内容をまとめておきます。
月経のしくみと女性ホルモン
女性ホルモンは、卵巣から出るホルモンです。その絶妙なバランスに従って女性は排卵し、月経周期を繰り返しますが、その調節には脳から出る他のホルモン(性腺刺激ホルモンや黄体形成ホルモン)も関係しています。
月経周期とは
月経周期は、月経初日を1日目と数えます。そして、次の月経初日までの間を1つの周期とします。
月経周期は、排卵を境に卵胞期と黄体期に分かれます。
卵胞期は、卵胞の発育とともに、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が増える時期です。一方、排卵した後の卵胞が黄体となって、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌する時期が黄体期です。
卵胞から排卵された卵子は、タイミングよく精子と出会うことができると受精し、受精卵となります。この受精卵が子宮に着床すると妊娠が成立します。
着床とは、子宮の壁の内側にある子宮内膜に受精卵がくっつくことを意味します。受精卵は、受精後数日間かけて卵管内から子宮に移動し、着床します。
このタイミングに合わせて、子宮は子宮内膜を厚くして着床する環境を整えて待機しています。そのために、卵胞期に子宮内膜が増殖し、黄体期にはその厚みを増します。
もし、受精卵がやってこなかったら、着床しなかったら、その周期の子宮内膜ははがれ落ちてリセットされます。
これが月経になります。
動物にも月経はあるの?
ヒトは、通年妊娠することができる動物で、毎月排卵しています。妊娠しなければ、毎月月経が来ることになります。ほかの動物はどうでしょうか。
赤ちゃんを子宮で育てる哺乳類のうち、月経がある動物はヒトを含む一部の霊長類(サルの仲間)など、ごくわずかです。
そのサルも、季節によって繁殖期とそうでない時期があるので、繁殖期以外は月経がないようです。[参考文献:霊長類進化の科学]
他の哺乳類も、排卵に伴って子宮内膜を厚くしてはいるのですが、受精卵が着床しなかったときに子宮内膜をはがすのではなく、吸収してしまっています。その方が無駄がなさそうですね。
ネコやウサギなど一部の哺乳類では、交尾の刺激によって排卵するため、子宮内膜をはがす必要がありません。
ところで、ヒトでは、受精卵は受精後すぐに着床します。子宮内膜が着床に適した時期は数日で長くはありません。
一方、冬に冬眠するツキノワグマは、受精卵が着床することなく卵管に長期間とどまり、冬眠するタイミングでやっと着床するそうです。
この着床遅延というシステム、非常に合理的です。
①交尾をするのは、余裕がある春~初夏。冬眠前は餌を食べるのに忙しいので。
②秋にたくさん餌を食べられたら、冬眠前に着床。蓄えが少なければ着床しない。
③妊娠期間は短く、小さく産んで、冬眠中に母乳で育てる。
私たちの月経周期も、ヒトとして進化した結果なんでしょうが…
毎月あるものなので、なるべく快適に、上手に付き合っていきたいですよね。
婦人科がん検診を受ける際に知っておきたいこと
婦人科がん検診って、何をするの?
婦人科がん検診では、子宮がんの検診を行います。ほかに、女性特有のがん検診としては、乳がん検診があります。
子宮がんには、子宮の入り口にあたる子宮頸部にできる子宮頸がん、赤ちゃんを育てるお部屋にあたる子宮体部にできる子宮体がんがあり、それぞれの場所にできやすいがんのタイプが異なります。
一般的な婦人科がん検診で検査をするのは、入り口の方、子宮頸がんのがん検診です。
20歳以上の女性は、2年に1回受けることが推奨されています。
がん検診では、内診をして子宮の入り口を観察し、ブラシでこすってはがれる細胞を採取します。
ほとんどの場合、痛みはありません。時々、こすった刺激で少量の出血がみられます。
採取した細胞は、細胞検査士という専門家がチェックします。異常の可能性があれば、細胞診専門医も確認して、最終診断をくだします。どの検査施設でも、この大切なステップについての精度管理が行われているので、がん検診を受ける施設による診断の差はほとんどないと言ってよいでしょう。
最近は、採取した細胞を専用の保存液で回収保存し、そこから細胞診の標本をつくる液状化検体細胞診(LBC法)が普及してきました。
この方法だと、採取した細胞の数が少ない、乾燥してしまっていた、などの理由による不適正標本が減ることが期待できます。
お受けになるがん検診がLBC法かどうか、確認なさってもよいかもしれませんね。
子宮頸がんのほとんどは、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因です。HPVの感染を防ぐワクチンが開発され、世界的にその効果が確認されてきました。
日本でもこのワクチンの普及が望まれるところですが、現在は停滞しています。
子宮頸がんは、早期に発見して治療すれば治癒率も高く、子宮を温存することも可能です。
しかし進行がんになると再発率・死亡率も高くなります。 日本では、毎年約1万人の女性が子宮頸がんにかかり、約3000人が死亡しています。2000年以後、患者数も死亡率も増加しています。
子宮頸がんの予防にはHPVワクチンによる予防がまず大切であり、次に、子宮頸がん検診で早期発見が重要です。
ワクチン接種を受けた方もがん検診は必要です。娘さんが成人になったら、親子で子宮頸がん検診を受けにいらっしゃってください。
ところで、体がん検診は受けなくていいの?
婦人科がん検診をしていると、たびたび聞かれる質問です。
子宮体がんの検診方法は、子宮体部の細胞を細長い歯間ブラシのような器具で採取して検査をする体部細胞診が一般的ですが、体部細胞診をすることで子宮体がんによる死亡を減らせるかどうかは、はっきりしていません。
そのため、市民がん検診として助成の対象になっていない自治体も少なくありません。たとえば加古川市、高砂市では、医師が必要と判断した場合のみ実施できることになっています。
オススメは、
①子宮頸がん検診を定期的に受診する
②不正出血があれば、必ず婦人科を受診する
のセットです。
子宮体がんは、早期の段階で出血を来すことが多く、不正性器出血での発見が約90%といわれています。少量でも出血があれば、すぐに医療機関を受診することで早期発見が可能です。
特に、閉経後に性器出血がある場合は、月経がある年代に比べてがんが原因である可能性が高くなります。放置せずに、必ず婦人科を受診なさってください。
こんな時も、婦人科を受診しよう ―月経の異常―
講座では、月経の異常についてもお話ししました。
月経異常の分類や産婦人科受診のタイミングについては、以前、こちらの記事にまとめています。
量が多い、月経痛がつらい、月経前症候群がつらい。そんな症状に対しても、ホルモン剤による治療で軽減させることができます。お悩みの方には、産婦人科を受診することをお勧めします。