ゼロ歳から始める性教育

先日、新米ママさん向けの講座で「ゼロ歳から始める性教育」というテーマでお話をしました。
この記事では、その時の内容をご紹介します。

ゼロ歳から始められる？

タイトルを見たら、

「性教育って、ゼロ歳から始められるの？」
「赤ちゃんに、何を話せばいいの？」

と思われたかもしれませんよね。

大丈夫です、赤ちゃんにも伝えられることはあります。

私たちは、自分の周りの環境から多くのことを学びます。
日々の生活で見せている私たちの態度や行動、それらすべてが赤ちゃんにとっては教育となりうるものです。

性教育として伝えたいことを、お子さんとの生活の中で態度や行動で示すことが、ゼロ歳から始める性教育となるものです。

何を伝える？

性教育で伝えたいこと

講座では、始めにこんな質問をしました。

「皆さんは、お子さんに、どんな風に育ってほしいですか？」

以下は、その時にいただいた答えです。

「健康に育ってほしい」

「幸せになってほしい」

「相手を思いやれる子になってほしい」

実は、性教育は、そんな皆さんの願いをかなえるツールにもなるものです。
つまり、健康で幸せに育つために必要な知識やスキルを伝えること、それが性教育の目的です。

包括的セクシュアリティ教育って？

ここで言う性教育とは、「包括的セクシュアリティ教育」のことを指します。

包括的セクシュアリティ教育とは、子どもたちの健康とウェルビーイング、尊厳を実現し、お互いを尊重できる（性的な関係も含む）人間関係を育てるためのものであり、そのために必要な知識やスキル、態度や価値観を子どもたちに身につけさせるものです。

二次性徴や妊娠・出産など、生殖に関係することだけを教えるものではありません。

具体的には、以下のようなコンセプトを伝えていくものとされています。

人間関係
価値観、人権、文化、セクシュアリティ
ジェンダーの理解
暴力と安全確保
健康とウェルビーイングのためのスキル
人間のからだと発達
セクシュアリティと性的行動
性と生殖に関する健康

たくさんのコンセプトがありますよね。だから、「包括的」なのです。

これらのコンセプトを、くり返し、子どもたちの発達成長に合わせて段階を踏んで、科学的な根拠をもとに伝えていくのが、包括的セクシュアリティ教育です。

ゼロ歳の時から伝えられること、伝えたいこと

ここからは、性教育を通して子どもたちに身につけてほしい幅広いコンセプトの中から、生まれた時から伝えることができる内容について、具体的にご紹介します。

お子さんと接する時に、お子さんの健康、ウェルビーイング、尊厳のために実践したいこと

清潔を保つ：おむつを替える時、お風呂に入る時、体を清潔に保つことの心地よさや大切さを伝えましょう。「きれいになって気持ちいいね」「うんちが出てすっきりしたね」と声をかけてあげるのもよいでしょう。

尊厳を保つ：赤ちゃんであっても、人としての尊厳があることには変わりありません。ゼロ歳の時からプライベートゾーンを大切にしてあげてください。「見せてもらうよ」という態度を示し、オムツの交換時や授乳時にはプライバシーが確保できる場所を選びましょう。

境界線を保つ：自分自身とお子さんの間に、境界線をきちんと引きましょう。お子さんは、自分とは別の人格を持った一人の人間です。自分の考えを押しつけず、お子さんの気持ちを尊重できるよう、赤ちゃんの頃から意識しておきましょう。

家庭での人間関係によって、お子さんに手本として示したいこと

家族のかたち：家族にはいろいろな形があること、家族のメンバーにはそれぞれの役割があることを伝えていきましょう。どれがいいとか、悪いとかはありません。大切なのは、家族のメンバーが対等な関係で良好な関係を築けていることです。また、「あなたが大切だよ」という気持ちで、赤ちゃんの顔を見て優しく抱っこをしてあげてください。

人権の尊重：性教育は、人権教育です。赤ちゃんだけではなく、家族のメンバーすべての人権を尊重しましょう。赤ちゃんは、両親や家族の関係をずっと見て育ちます。お互いを大切にする人間関係を築いてください。

ジェンダー平等：「男らしさ」「女らしさ」のようなジェンダー観は、2歳ぐらいでも既にできあがっていると言われています。それは、大人の声がけや行動によるものです。お子さんの希望や好み、可能性をつぶしてしまわないように、ジェンダーにもとづいた思い込みをできるだけ排除した子育てをしましょう。ジェンダーにもとづいた思い込みは、おもちゃ（車、お人形）や遊び（おままごと、戦闘ごっこ）、好きな色、服装や髪形（スカート、髪の毛の長さ）など、いろいろなところにあります。また、自分たちの家庭内の役割についても、ジェンダー平等の観点から見直してみましょう。