妊娠のしくみから、不妊治療を考える(その1)
6月12日は、2回目のつぼみサロンを開催しました。
今回のお茶菓子は、マロングラッセ。
栗は、「気」を補う効果が期待できる食材です。
妊娠しやすい身体になるためには、「元気であること」を大切にしてくださいね。
サロンでは、不妊症の原因と検査、治療についてお話ししました。
不妊治療を受けると、一通りの検査を受けて治療開始、やがてステップアップという流れにのって進んでいきます。
ただ、自分たちカップルの状況がどうなのか、妊娠する過程の中でどこが問題なのか、ともすると迷いがち。
そこで、妊娠のしくみ(過程)をベースに、不妊治療を分類して説明を試みることにしました。
妊娠する過程は、ドラマチックでなかなか大変な道のりでもありますので、数回に分けてお伝えしましょう。
ここで必ず覚えておいてほしいことは、妊娠する過程はどのステップも大切で、どこに問題があったとしても、その異常に軽重はないということ。
どんな問題を抱えていてもゴールは同じく、「元気な赤ちゃんを授かる」ということなんですから。
配偶子を作る
卵子と精子のことを配偶子と言います。
ヒトの配偶子は、大きさも形も随分と違うペアになっています。
卵子は、受精卵を育てる栄養を蓄え、育てるための環境(子宮)を担保する。
精子は、卵子のもとへ移動するための運動機能に特化する。
種として生き延びるために、役割分担をした結果、大きさや形も違うし、作られ方も異なるようになったのでしょう。
それぞれの作られ方を見てみましょう。
卵子を作る
卵子は、お母さんのお腹の中にいるとき、産まれてくる前にほとんどを作り上げています。
その数およそ数百万個。
その数はどんどん減っていき、思春期を迎える頃には20万個程度になっていると言われています。
思春期になると、脳から卵巣を刺激するホルモンがしっかり出るようになってきます。このホルモンの刺激で、卵子のもと(卵母細胞)が減数分裂を再開します。
月経周期のたびに、1つの卵子のもとだけが成熟し、排卵にいたります。
12歳から50歳まで順調に月経が来ると仮定すると、生涯に経験する月経の回数は
12(か月)×38(年)=456(回)
つまり、生涯に排卵する卵子の数は400個程度ということになります。
残りの卵子のもとは、自然に消滅していきます。
卵子のもとの個数は産まれる前に決まっている、なくなるスピードは人によってさまざま。
そして、残りがわずかになると閉経を迎えるわけです。
卵子のもとの個数がもともと少なかったり、早くに数が減少すると、早発卵巣不全や卵巣機能不全といわれる状態になります。
なかなか排卵できなくなり、月経不順になります。
この場合の治療は、ホルモン剤などの力を借りながら、卵巣内の残された卵子のもとを育てる(排卵誘発)工夫が必要になります。
卵子のもとは、産まれる前から作られているので、どの卵子も自分と同じ年数経ったものになります。
年月を経た結果、減数分裂がうまく進まない可能性が高くなります。
減数分裂がうまくいかないと、染色体の数が本来の数ではない受精卵ができてしまうかもしれません。また、受精しにくくなることも考えられます。
年齢が高くなると妊娠しにくくなったり流産しやすくなったりするのは、この卵子の老化が大きく関係しています。
現在の医療では、確実に卵子を若返らせることができる治療はありません。
治療回数を重ねることで、妊娠率の低さを補っていくことになります。
精子を作る
精子のもとは、精巣の中で常に複製され続けています。
その精子のもとが減数分裂をすることで精細胞になります。
丸い形の精細胞は、やがて変態を始めて精子になります。
すなわち、卵子に入り込む装置である先体、卵子に遺伝情報を送り届ける核の部分、エンジンに相当するミトコンドリア、移動に必要な尾からなる、オタマジャクシのような形に変化します。
これらの変化は、精巣の中にある精細管という細い管の中で行われます。
精細管には、精子のもとをサポートする細胞もあります。
このように精子はどんどん作られているのですが、何らかの理由でその数が少なかったり、形がいびつであったり、元気に動けなかったりするものができることがあります。
これを造精機能障害と言います。
造精機能を改善させる治療として、生活習慣などを改善する、内服薬やサプリメントを服用するといった方法があります。
また、脳から出るホルモンの不足が原因の場合は、注射で補う治療(hCG療法など)を行います。
精索静脈瘤が原因の場合には、手術で治すこともあります。
これらの治療を行ってもうまくいかなかった場合には、数少ない精子を活用するために、生殖補助医療として顕微授精を行います。
精液中に精子を見つけることができない場合には、精巣内から直接取り出す手術で精子を確保する(精巣精子採取術)こともあります。
次回は、このように作られた卵子と精子が、出会うまでの過程について説明しましょう。