大人だって、性教育が必要だ!―ふぁみラジでお話ししました―
3月27日、BANBANラジオ「ふぁみラジ」のゲストコーナーに出演しました。加古川駅そばにあるコミュニティスペース「びぃぷらす」で公開生放送し、収録後に「大人のための性教育」としてプチ講演も行いました。
先月、小中学生を対象に性教育を行いました。ところで、私たち親世代はどんな性教育を受けてきたのでしょうか?役に立った話、聞いた記憶はありますか?
そこで、小中学生に行った性教育の内容をおさらいしながら、お子さんに質問を受けたときにどのように答えるか、という視点でお話をしました。
子どもさんに話すときの心得
国際的な性教育のガイドラインでは、包括的性教育の主要な目標は、
- 子供や若者に健康、幸福、尊厳を実現するための知識、態度、スキルを備えさせること
- 彼らの選択によって影響を受ける他人の幸福を考慮に入れること
- 彼らの権利を理解し、行動すること
- セクシュアリティの認知的、感情的、身体的、社会的側面について、科学的に正確で、段階的で、年齢的および発達的に適切で、ジェンダーに敏感で、文化的に妥当で柔軟な情報を提供することによって、他人の権利を尊重すること
- 青少年に価値観、態度、社会的および文化的規範、性的および社会的関係に影響を及ぼす権利を探求する機会を提供すること
- 生存・生活するためのスキルの獲得を促進すること
です。
その目的を果たすために、人間関係、価値観、カラダとココロ、リプロダクティブヘルスなどの重要な概念を、相互に補強しながら複数回にわたって徐々に複雑さを増して学んでいくべきだとされています。
いわゆる「性教育」に該当する「性と生殖に関する解剖と生理」を伝えるにあたって、下記のことに留意しましょう。
- 子どものうちから、体の名称や働きに興味を持つことは自然なことであり、それらを知ることは重要である
- 性と生殖に関する部分についても同様である
- 子どもの性と生殖に関する健康を守るために、正しい知識を適切に提供することが有用である
隠したり恥ずかしがったりせず、正しい知識を伝えてください。
小さい頃から段階を踏んで話題にしていると、素直に聞いてくれます。
親子で会話できる環境にあれば、お子さんが自分のカラダやココロの変化について、独りで不安に感じたり悩んだりせずに済むかもしれません。
お子さんからこんな質問を受けたとき、どう答える?
質問の隣のカッコ内は、回答の内容を学んでほしい年齢層を示しています。伝える内容は、お子さんの年齢や発達状態に合わせる必要があるので、参考になさってください。
赤ちゃんはどこから産まれる?(5-8歳)
赤ちゃんとなる新しい命は、小さな小さな一つの細胞(受精卵)からできます。それは、精子と卵子という命のもと(配偶子)がくっつくことから始まります。
この受精卵が子宮で育って、赤ちゃんとなって産まれてきます。子宮の中で新しい命を育てることを妊娠といい、だいたい10か月間続きます。
子宮は、女性の体の中にあって大切に守られています。赤ちゃんは、腟という通り道を通って産まれてきます。腟は、おしっこが出るところ(尿道口)とお尻の穴(肛門)の間にあります。
大人になると、体はどう変わる?(9-12歳)
思春期になると、第二次性徴とよばれる体の変化がおこります。これは、大人になるための変化、すなわち新しい命を生み出す準備をすることです。
これらの変化は、男性は男性ホルモン、女性は女性ホルモンとよばれる性ホルモンによるものです。
男性の体は精子を体の外に出すために、射精できるようになります。
精子はとても小さく、弱い細胞です。そのため、精液とよばれる白いネバっとした液体と一緒に出ることで、守ってもらいながら、卵子のいるところまで移動します。
射精できるようになってすぐは、体も練習中なので、勝手に射精していることがあるかもしれません。精液は汚いものでありませんが、下着についたときには、ちょっと水洗いして着替えましょう。
陰茎は、だんだん亀頭が大きくなっていきます。サイズは個人差があります。包皮から亀頭がいつも見えている必要はありません。でも、包皮をむいて綺麗に洗ってあげる習慣はつけておきましょう。
女性の体は、毎月排卵をするようになります。
赤ちゃんはへその緒を通してお母さんから栄養をもらいますが、へその緒ができるまでは子宮の壁(子宮内膜)に直接くっついてそこから栄養をもらいます。子宮は、毎月受精卵を受け入れる準備をし、受精卵が来なかった時には子宮内膜をはがしてリセットします。これが月経です。
毎月出血が起こるので、「月経はうっとうしいな」と思うかもしれませんが、赤ちゃんを育てる大切な準備をしてる結果だと思いましょう。月経の期間中は、生理用品を使うことになります。胸がふくらみ始めたら、あらかじめ保護者の方と相談して用意をしておきましょう。
お腹がギューッとする違和感があるかもしれませんが、そんなに痛くはないはず。でも、痛い時には我慢する必要はありません。薬を飲んだり、産婦人科医に相談しましょう。
赤ちゃんはどうやってできるの?(12-15歳)
精子をなるべく安全に卵子のもとに届けるために、陰茎を腟の中に入れた状態で射精をします。これが狭義の性交です。
陰茎が腟の中にスムーズに入り、そこで射精をするために、人間の体は性的な興奮をスイッチにしました。
性的な興奮があると、陰茎は勃起します。その状態で腟の中で刺激が加わると、射精します。男性の性的興奮・快感の一連の変化は、このスイッチのために定型的です。
一方で、女性の体は受精卵を育てる方がメインの役割なので、性的な興奮や快感については男性より複雑です。男女の体の違いは、こんなところにもあると覚えておいてください。
人間は、脳が発達したので、性交に上記のような生殖以外の目的も持つようになりました。
快感を感じること、そして、その快感を相手と共有して共感すること。
いつからエッチしてもいいの?(12-15歳)
なにごとも、結果として何が起こるかわからないまま実行に移すのは危険です。
性交の結果おこりうること、それらに対する予防や対策をきちんと知っておきましょう。そして、自分と相手の気持ちや体を尊重できる人になってからにしましょうね。
性交は、生殖行動です。妊娠する可能性があります。
望まない妊娠をしないために、知っておいてほしいことがあります。
- 自分(相手)の妊娠しやすい時期はいつでしょうか?月経周期が安定しない思春期の頃は、「安全日」はないと思っておきましょう。
- 排卵前後の妊娠しやすい時期に妊娠する可能性は、だいたい20%です。初めての性交で妊娠することもあります。
- 妊娠を防ぐ方法(避妊法)として、コンドームと経口避妊薬(ピル)を使いましょう。でも、コンドームはピルに比べると失敗例が多いことも知っておきましょう。
- 妊娠検査薬は薬局などで購入できます。妊娠すると、排卵してから3週間ほどする陽性になります。月経が1週間以上遅れたら、あるいは、気になる性交があって3週間以上月経が来なかったら、検査をしましょう。そのためにも、月経が始まった日などの記録をつけておくことをお勧めします。
- 妊娠に気が付いたとき、たとえ相手や保護者の方に話せなかったとしても、産婦人科医は相談に乗ってくれます。独りで悩まないで。
性交は、体液のやり取りです。感染症にかかったりうつしたりするリスクがあります。
このリスクを確実に避けるために、「やらない」というのも立派な選択肢です。
- 感染症の多くは、粘液や粘膜の接触でうつります。キスだけでも移る可能性があることも知っておきましょう。
- コンドームは性感染症の予防に効果があります。ピルには予防効果はありません。
- もし感染したか心配になったら、産婦人科・泌尿器科を受診するか、保健センターに相談しましょう。
セックスは生殖行動であるだけでなく、自分や相手の心身ともに大切なところに触れる行為です。自分や相手をきちんと守れない人がするのはお勧めできません。自分がしたくないことは、正々堂々と断りましょう。
相手の気持ちを確かめましょう。好き=OK、とは限りません。
自分の性について悩みがあるの(9-15歳)
性、性別には、生物学的な性(セックス)と社会的な性(ジェンダー)があります。
生物学的な性は、性染色体の組合せで決まっているものです。実際には、染色体を調べるのは大変なので、外見すなわち性器や外陰部の形、からだつきなどで判断されます。
性染色体には、X染色体とY染色体があります。X、Yを1本ずつ持つのが男性、Xを2本持つのが女性です。Y染色体は男性しか持たないので、お父さんからもらった染色体を引き継いでいます。女性のX染色体は、両親から1本ずつもらっています。
Y染色体にあるSRYという遺伝子が働くと、生殖器が精巣になります。その遺伝子が働かないと生殖器は卵巣になります。精巣、卵巣がそれぞれ男性ホルモンと女性ホルモンを出し、性器も男性、女性のものに分化していきます。
社会的な性は、人々とのかかわりの中で明らかになっていくものです。
自分の性が男であるとか、女であるとか、そういった意識は皆さんにもあるかと思います。これを性自認と言います。ジェンダーとかこころの性ということもあります。
また、自分が好きになる相手の性別が男性か女性かという傾向を性指向と言います。指向というのは、気持ちがどの方向を向いているかということです。同じ「しこう」でも、嗜好という言葉は、お酒やコーヒー、タバコなどをさす嗜好品にも使われますが、こちらだと好みとか趣味という意味です。この嗜好とは区別してください。
社会的な性は、性自認も性指向も、生まれつき決まっているものです。好みではないので、変えようとしても変えられるものではありません。
多くの場合、ジェンダーすなわちこころの性とセックスすなわちからだの性は一致しています。性指向の対象は異性であることが多いでしょう。
でも、セックスとジェンダーが一致しない人もいます。好きな人ができたとき、性指向に関して戸惑うこともあるかもしれません。
自分もそうかもしれない、お友達もそうかもしれない。そう考えることができる、思いやりを持った人に育ってほしいと思います。
また、もしそんな悩みを打ち明けられたら、まず、打ち明けてくれたこと=信頼してくれていることと受け止めましょう。そして、「性のあり方というアイデンティティも含めてその人を丸ごと受け止めるよ」ということを伝えてください。
具体的な知識や支援が必要なら、相談窓口のあるNPO法人などの社会資源を活用しましょう。
正しい性教育は、私たちを守ってくれます
体のしくみを知っていれば、体の異常について知識があれば、トラブルに早く気づくことができます。カラダやココロのSOSサインに気づき、行動に移すことができれば、トラブルが悪化する前に健康を取り戻せるでしょう。
性と生殖に関する健康についても同じことが言えます。健康リテラシーは、自分を守るための武器になります。望まない妊娠、感染症、中絶…、知識があれば防げた悲しい経験は、重ねてほしくありません。
当日の会場からも、「お父さんにも聞かせたい」「今日、聞くことができてよかった」と言った声をいただきました。
今後も、皆さんの健康リテラシーの向上に貢献するために、Mimosaの活動を続けたいと思っております。