あなたの月経、多くはありませんか?
前回のコラムで貧血についてお話ししました。貧血の原因として、無視することができないのが過多月経です。
過多月経とは、月経による出血(経血)の量が多いことを言います。
あなたの月経はどうでしょうか?さっそくチェックしてみましょう。
過多月経チェック
- 仕事中や就寝中に経血が漏れる心配を抱えている
- 昼でも夜用ナプキンが必要なことがある
- 昼用ナプキンでは1時間もたないことがある
- 月経期間中は、仕事などの外出に支障がある(外出を控えている)
- レバーのような塊が出る
- 以前より経血の量が増えた、月経の期間が長くなった
どうでしょうか。当てはまるものがありましたか。
1つでも当てはまる項目がある方は過多月経の可能性があります。
過多月経とは
日本産科婦人科学会では、過多月経を「月経の出血量が異常に多いものをいう。通常140ml以上をいう」と定義しています。
ただ、月経の量を量るのは現実的ではありません。実際の診療では、上記のチェック項目などを質問することで月経の量が多いかどうかを推定します。
過多月経の問題点
経血が多いと、日常生活に支障をきたします。
「職場でトイレに自由に行くことが難しいので困っている」「月経の時期は長時間の移動は無理」と言われる方が少なくありません。
「温泉や海外への旅行と月経が重なると困る」「結婚式や試験などの大切な日程から月経をずらしたい」など、誰でも思うことですが、月経の量が多い人にとっては本当に切実な問題になります。
月経期間中、汚す心配などから着るものに気を遣うというお悩みを聞くこともあります。
また、最初に触れたように、鉄欠乏性貧血の原因となり、貧血や鉄不足による症状も出るようになります。
過多月経の原因は?
- 子宮筋腫、子宮腺筋症
いずれも、子宮の正常な筋層の中に生じることで子宮の収縮を妨げます。子宮が効率よく収縮できないと、出血をうまく止めることができません。
「月経血が蛇口をひねったように出てくる感じがしませんか」とお聞きしてうなずかれるほとんどの方に、何らかの治療が必要な子宮筋腫が見つかります。
- 無排卵などの月経不順
排卵が順調でない場合、子宮の内膜が厚くなりすぎることがあります。その結果、経血の量が増えます。
初経間もない頃や閉経に近づくと、月経不順に伴う過多月経の頻度が多くなります。
- 出血性素因
出血が止まりにくい素因がある場合、経血も止まりにくくなって量が増えることがあります。
- 薬物
アスピリンなどの薬を服用していると、経血が増えることがあります。
- がん
子宮体がんの初期の症状として、過多月経を認めることがあります。特に、閉経移行期には注意が必要です。
- 子宮内避妊具
避妊用のリングを入れていると、種類によっては経血が増えるものがあります。
過多月経の治療
子宮筋腫があるからと言って、必ずしも手術が必要なわけではありません。
「月経の量が減ったら、もっと快適な日を過ごせるのに」と思う方は、ぜひ産婦人科を受診してください。
過多月経の原因を調べ、貧血の有無をチェックしてもらいましょう。そして、どんな治療法があるか、自分にはどの治療が適しているか、産婦人科医とよく相談してください。
- 薬物療法
- 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP):排卵を抑制することで子宮内膜を厚くさせません。経血を減らすほか、月経痛の緩和効果も期待できます。
- 黄体ホルモン剤:子宮内膜症の治療薬です。
- GnRH製剤:閉経と同じホルモン状態にして、月経を一時的に止める薬です。
- 子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS):子宮内に挿入して子宮内膜に直接効かせます。経血を減らすほか、月経痛の緩和効果もあります。
- 止血剤や鎮痛剤、漢方薬など
- 外科療法:最近は腹腔鏡で手術を行うことも増えたため、入院期間も短くなる傾向にあります。
- 子宮摘出術:子宮をとる手術なので、月経がなくなります。将来、妊娠を希望していない場合に選択されます。
- 子宮筋腫核出術:子宮筋腫だけを取り除く手術です。
- 子宮内膜焼灼術:子宮内膜を焼くことで経血を減らす手術です。将来、妊娠を希望している場合には実施しません。
以前に比べて、薬物療法の選択肢が増えました。ご自分の体への負担が少ないものを選ぶことができます。
薬を飲むことに抵抗がある方もいらっしゃいます。確かに、副作用も起こりえます。
ただ、何人も子どもを産んでいた昔の女性と比べて、現代の女性が経験する月経の回数は非常に多くなり、子宮内膜症などの疾患も増えています。女性の社会進出も進み、月経を上手にコントロールする必要性は高まっています。
メリット・デメリットの説明を聞き、一番よい方法を見つけてください。
まとめ
経血の量は、他人と比較することができませんよね。実際、「月経の量は多いですか」という問診に対して、「ふつうの月経の量がどのくらいか知らないので、分かりません」と答えられる方もいらっしゃいます。
しかし、他人と比較する必要はありません。
経血が漏れる、トイレからなかなか出られない、などご自分が困っていれば産婦人科を受診しましょう。また、定期的な健診で貧血を指摘されなくても、徐々に血色素量(ヘモグロビン)の値が下がっている方も要注意です。
月経に関するトラブルは我慢せずに適切に対処して、月経期間中もより快適に過ごせるようにしましょう。
最後に
この投稿は、「シンママStyle」というサイトに掲載していたコラムを一部修正したものです。
過多月経は、シングルマザーに限らず、忙しい女性が放置しがちな状態です。しかし、忙しいからこそ、月経に関するつらい症状は改善したいものです。
産婦人科医と相談して、身体が楽になる対処を見つけましょう。
謝辞
「シンママStyle」は2021年9月末をもって閉鎖されることになりました。「シンママStyle」の編集長をはじめとして編集部の皆さんには、Mimosaの活動理念にご賛同いただき、コラムを書く機会を与えていただきました。
また、Mimosaのホームページ読者の皆さんの健康にお役立ていただくため、コラム原稿の再掲を快くご承諾くださいました。ここで改めてお礼を申し上げます。