「これって更年期でしょうか?」に答えるのは難しい。その訳は?

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最近、皆さんは産婦人科を受診しましたか。

「いいえ」という方が多いかもしれません。「出産後、がん検診以外で行っていない」という方もいらっしゃるでしょう。

産婦人科を受診する理由の一つとして、初めて経験した月経トラブルがあります。

たとえば、「いつも順調な月経が今月は来ない」「月経が止まらない」「月経の量が今回とても多かった」などです。

ただ、「いつも月経が多い」「ずっと前から月経不順である」などの常にある月経トラブルこそ早めに受診して対処してほしいと願いながら、診療をしています。

「これって更年期?」

さて、初めて経験した月経トラブルで受診された40歳代の方からよく聞かれる質問があります。

それが「これって更年期でしょうか?」です。

確かに、気になりますよね。更年期って、何でしょうか。

更年期とは…

更年期とは、思春期、性成熟期に続くライフステージのひとつで、閉経する時期をはさんだ前後10年間を指します。最後の月経から1年間月経がない時、その最後の月経が閉経になります。閉経するのが50歳前後のため、更年期は45-55歳になります。

閉経する年齢は個人差がありますから、更年期も人によってその年齢は前後します。

更年期になると、今まで安定していたエストロゲン(女性ホルモン)の分泌が急激に低下し始めます。これに伴って、さまざまな身体的、精神的な症状が現れるようになります。

これらの症状を更年期症状と言い、そのうち日常生活に支障を来すような症状が強いものを更年期障害と呼びます。

したがって、更年期はすべての女性に訪れますが、更年期障害はすべての女性に起こるものではありません。また、症状もその重さも千差万別です。

月経トラブルと更年期

初めて経験した月経トラブルは、受診をきっかけに子宮筋腫などの病気が見つかることもありますが、多くはホルモンバランスの乱れが原因で起こっています。

今まで順調だったとすれば一時的なバランスの乱れである可能性が高いでしょうが、更年期症状として今後も月経トラブルを起こしやすくなるかどうかの判断は容易ではありません。

女性のライフステージを分類する方法としてSTRAW+10分類(表1参照)があります。

この分類によると、閉経前の月経周期が大幅に(60日以上)乱れる時期は、多くの場合1-3年持続します。その前にあたる-2期は、その期間に個人差があります。

周期の乱れを伴う月経トラブルは-2期の症状の可能性がありますが、繰り返さなければ-3a期にも起こりうる一時的なトラブルと考えられます。

初めて経験した月経トラブルに対する「これって更年期でしょうか?」という質問に答えるには、受診後の経過に基づいた判断が必要なのです。

表1 STRAW+10分類(筆者による翻訳):参考文献(1)から引用改変

更年期症状いろいろ

産婦人科を受診される理由が月経トラブルでない方もいらっしゃいます。

めまいがする、肘が痛い、舌がピリピリする、イライラする、眠れない…。実にさまざまな症状で来られます。

多くの方が40-60歳代です。そして、お聞きになります。「これって更年期でしょうか?」と。

確かに、更年期障害で出現する症状は多岐にわたります。

更年期障害かどうかをチェックできる簡略更年期指数(表2)を見てみましょう。ここにあるだけでも10種類、他の指数ではもっと多くの症状が挙げられています。

ですから、産婦人科に関係なさそうな症状でも、更年期障害の治療をすると改善することがあるのです。

「これって更年期?」に答えるために必要なこと

ところで、表2の指数には大切な項目が抜けています。それは月経の状態です。

表1で見たように、月経不順があれば閉経前後の可能性がありますが、月経が順調な方や閉経して何年もたった方は、閉経期には該当しません。

月経不順が伴っていれば、更年期障害とみることができますが、安易に「更年期だから」と決めつけてしまうと他の病気を見逃してしまうこともあります。

内科や耳鼻科、脳神経外科など、お困りの症状を専門的に診てくれる診療科で検査して何も異常が出なかった場合に、更年期障害を疑ってみましょう。

表1にあるとおり、更年期になるとFSHというホルモンの値が上昇していきます。FSHは、エストロゲンを出すように、卵巣に命令を送るホルモンです。

血液検査でFSHが上昇し、エストロゲンが減少していれば、更年期パターンです。そのうえで、エストロゲンを補うことで症状が改善すれば、更年期による症状だと最終的に判断することができます。

月経トラブルではない症状に対する「これって更年期でしょうか?」という質問に答えるには、他の診療科も含めた総合的な判断が必要なのです。

症状
顔がほてる10630
汗をかきやすい10630
腰や手足が冷えやすい14950
息切れ、動悸がする12840
寝つきが悪い、または眠りが浅い14950
怒りやすく、すぐイライラする12840
くよくよしたり、憂うつになることがある7530
頭痛、めまい、吐き気がよくある7530
疲れやすい7420
肩こり、腰痛、手足の痛みがある7530
合計点
表2-1 簡略更年期指数(SMI):参考文献(2)から引用
0~25点異常なし
26~50点食事、運動に気を付け、注意を
51~65点更年期・閉経外来を受診しましょう
66~80点長期間にわたる計画的な治療が必要
81~100点各科の精密検査にもとづいた長期の計画的な治療が必要
表2-2 SMIの評価(合計点で判断します)

更年期を迎えるにあたって大切なこと

更年期は、女性のライフステージ後半のスタートでもある時期です。

更年期障害とよばれる症状も、ホルモンを補ったり漢方薬を飲んだり、いろいろな治療法で対処することができます。

必要以上に恐れることはありません。

いつ頃、どんな症状が出てきたら更年期と考えればよいのかを知っておきましょう。そして、自分のカラダの変化に敏感になっておきましょう。

「これって更年期でしょうか?」と聞かれたとき、最も大切なことは更年期かどうかでも更年期障害かどうかでもありません。

自分自身が健康で快適に過ごせているかどうか、そのために何ができるのか、です。

目指すところがはっきりすれば、この質問に対する答えも難しくはありません。気になることがあれば、産婦人科医と相談なさってください。

最後に

この投稿は、「シンママStyle」というサイトに掲載していたコラムを一部修正したものです。
まだお若い編集者の方に、「更年期って聞くと、漠然と不安に感じます」と言われたのを今でもよく覚えています。更年期は、人生の通過点です。なるべく不安を抱かずに迎えて過ごしていきたいですよね。

更年期を迎える前から、健康で快適に過ごせるように意識していきましょう。

謝辞

「シンママStyle」は2021年9月末をもって閉鎖されることになりました。「シンママStyle」の編集長をはじめとして編集部の皆さんには、Mimosaの活動理念にご賛同いただき、コラムを書く機会を与えていただきました。
また、Mimosaのホームページ読者の皆さんの健康にお役立ていただくため、コラム原稿の再掲を快くご承諾くださいました。ここで改めてお礼を申し上げます。

参考文献

(1)Harlow SD, Gass M, Hall JE, et al. Executive summary of the Stages of Reproductive Aging Workshop +10: addressing the unfinished agenda of staging reproductive aging. Climacteric. 2012;15(2):105-114. doi:10.3109/13697137.2011.650656

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3580996/

(2)小山嵩夫、更年期婦人における漢方治療 : 簡略化した更年期指数による評価.産婦人科漢方研究のあゆみ 9, 30-34, 1992