こころの健康を維持するコツ―日常の生活リズムに気をつける

person holding white ceramic coffee cup leaning on brown wooden table

前回は、睡眠を取り上げました。今回は、睡眠を含んだ1日の生活リズムについてご紹介します。

体内時計を整えよう

皆さんは、「体内時計」という言葉を聞いたことがありますか。

体内時計とは、だいたい24時間の周期を繰り返す朝・夜のリズムに合わせて、私たちの体調や行動が連動するために重要な脳のメカニズムをさします。

体内時計がスムーズに働くと、私たちは心地よさを感じられるようにできています。反対に、体内時計が乱れると、うつ病や糖尿病、肥満やがんなど多岐にわたる心身の状態が悪化することも研究で示されています。

新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行し、私たちの生活は激変してしまいました。

昨年は、仕事や学校が休みになり、家で過ごす時間が増えたことで、朝起きる時刻や食事のタイミング、体を動かす時間など、日常のリズムの多くが突然変わってしまった人が多かったことでしょう。今でも、いろいろな制約があり、新型コロナウイルス感染症の流行前と同じリズムには戻せていないかもしれません。

このような状況では、私たちの体内時計は乱れやすくなるだけでなく、一度乱れたその体内時計を適切なリズムに戻すことも難しくなってしまいます。

乱れがちな今こそ、体内時計が正確に働くように努めてみませんか。リズムが整うことで、つらい気分をやわらげることができるかもしれません。

ここでは、国際双極性障害学会:時間生物学・時間療法タスクフォースと光療法・生物リズム学会という国際学会が共同で発表した提言を引用して、医学的根拠に基づいた規則的な日常生活を送るために役立つ、誰でもすぐはじめられる簡単なポイントをご紹介します。

日常生活を規則的に送るための自己管理術

  • 毎日、同じ時刻に起きる。
  • 自分自身で毎日決まって行う日課を設定する。いくつかの活動は、行う時間を決める。
  • 毎日、一定時間を屋外で過ごす。外に出られなければ、窓のそばで日の光を浴びる時間をとる。
  • 毎日、運動をする。
  • 毎日、同じ時間に食事をする。
  • 人と交流する時間をとる。
  • 日中の昼寝は避ける。どうしても昼寝が必要な場合は30分以内に。
  • 夜間に明るい光(特にブルーライト)を浴びるのを避ける。
  • 毎日、同じ時刻に就寝する。

時間栄養学から見た、規則正しい生活のメリット

毎日の生活リズムを変えることは、簡単なことではありません。でも、モチベーションとなるような効果があれば、少しは実行に移しやすくなるかもしれません。

そこで、時間栄養学の考え方をもとに、そのメリットをいくつかご紹介します。

時間栄養学とは…

体内時計を考慮した栄養学のことであり、体内時計に関係した遺伝子が見つかってから急速に発展してきた学問です。

たとえば以下のように、栄養や食品の成分によって体内時計が調節されることがわかっています。

  • 朝食を摂ると、体内時計がリセットされる
  • 脂肪を多く含む食事は、体内時計のリズムを弱くする
  • カフェインは、体内時計の周期を長くする

期待できるメリット、その①:ダイエット効果とメタボ対策

時間栄養学によると、同じ量を食べても食べる時間を変えると体重が変わることがあります。食事をとるタイミングがポイントのようです。

  • バランスの良い(タンパク質と炭水化物を含んだ)朝食を起きてから1時間以内に食べる
  • 1日でとるエネルギー量が同じならば、なるべく早い時間に食べる
  • 食事をする時間帯を制限する(朝ご飯から12時間以内に最後の食事を終える)
  • 夕食が遅くなる場合には、夕食を2回に分け、その一部を早めに食べておく

家で過ごす時間が長くなると、お菓子などをだらだらと食べてしまいがちです。食べる時間に注意して、体の調子を整えましょう。

時間栄養学における食事のポイント

期待できるメリット、その②:アンチエイジング

体内時計がしっかり調整されていれば、睡眠リズムも整います。朝に強い光を浴びることで、アルツハイマー病の患者さんや高齢者の睡眠問題が改善するという報告もあります。

体内時計の乱れが老化につながるという可能性も指摘されています。また、皮膚にある体内時計の遺伝子は、皮膚の老化や傷の回復に関わっているそうです。

記憶や認知機能など、脳の機能についても、体内時計が関与しています。睡眠リズムや食事のリズムを整えて、いつまでも若々しくいましょう。

運動も、時間の影響を受けるかも…

食事だけでなく、運動にもベストのタイミングがあるのではないか、と考えられるようになってきました。

筋力トレーニングによる筋肥大の効果をみる研究では、夕方に行った筋力トレーニングの方が効果的という報告がされています。今後は、運動する頻度やその負荷だけでなく、望ましいタイミングも示されるようになるかもしれません。

いずれにせよ、日常的に運動をしている方が体内時計のリズムがしっかりしているようです。まずは、日常に体を動かす習慣を取り入れていきましょう。

こころの健康を維持するために

今回は、ココロの健康を維持する方法の一つとして、「規則正しい生活をおくる」を取り上げました。

規則正しい生活を送るためにも、心がけることはたくさんあります。すべて守っていくのは難しいことでしょう。

どれでもかまいません。一つ選んでみてください。ちょっと努力すれば達成できそうなものがよいでしょう。

そして、それを手帳やメモ帳に書きとめ、毎日達成できたかどうか記録していきましょう。1ヶ月ほど続けてみてください。きっと、ご自分の中で何かが変わっていることにお気づきになるでしょう。

《参考文献》

  1. 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下における、こころの健康維持のコツ:http://jphp.jp/pdf/COVID-19_kotsu.pdf
  2. Oike, H., Oishi, K. & Kobori, M. Nutrients, Clock Genes, and Chrononutrition. Curr Nutr Rep 3, 204–212 (2014). https://doi.org/10.1007/s13668-014-0082-6:https://link.springer.com/article/10.1007/s13668-014-0082-6

最後に

この投稿は、「シンママStyle」というサイトに掲載していたコラムを一部修正したものです。
今回は、最初の緊急事態宣言が出されていた時期のコラムを修正してお届けしました。

どんな状況になっても、自分のリズムを整えていけることがココロの健康にもつながります。できそうなことから始めてみませんか。

謝辞

「シンママStyle」は2021年9月末をもって閉鎖されることになりました。「シンママStyle」の編集長をはじめとして編集部の皆さんには、Mimosaの活動理念にご賛同いただき、コラムを書く機会を与えていただきました。
また、Mimosaのホームページ読者の皆さんの健康にお役立ていただくため、コラム原稿の再掲を快くご承諾くださいました。ここで改めてお礼を申し上げます。