そのダイエット、大丈夫?
2020年の夏を過ぎたころからでしょうか、「生理が来ない」と受診する中高生が増えたような印象があります(2021年2月当時)。
話を聴くと共通していたのが、「緊急事態宣言で学校が休みになったので、ダイエットを始めた」「ダイエットのために食事の量を減らしている」という点です。「こんなところにも新型コロナウイルス感染症流行の影響が出るのか」と驚く一方、保護者の方も中高生のダイエットの危険性をあまり認識できていないように感じました。
そこで今回は、ダイエットに潜む危険性についてお伝えします。この記事を読んで、お子さんにとって(ご自身にとっても)安全で健康的なダイエットの参考になさってくださいね。
摂食障害に注意
摂食障害とは、ダイエットをきっかけに発症することが多い病気です。いわゆる拒食症などをさします。
体重がうまく減ると一時的に達成感や充実感が得られ、さらに極端な食事制限や偏った食事を追及する、という悪循環に陥ることで病気が進行します。低栄養の状態が極端になると死にいたることもあるため、適切な治療が必要です。
摂食障害とダイエットの違いは、
- やめようと思えるかどうか:ダイエットの場合は、やめようと思えばやめられます。
- 体重や食事のことが意識のほとんどを占めているかどうか:体重の変化や食事のことで頭がいっぱいになり、他のことに意識がいかない場合は、摂食障害です。
の2点です。
摂食障害を疑う場合には、心療内科や精神科に相談することも検討してください。
摂食障害情報ポータルサイト(http://www.edportal.jp/sp/index.html)が参考になります。セルフチェックもできます。
実は怖い、低栄養
摂食障害でなくても栄養が不足すると全身にさまざまな症状が出ます。栄養状態が改善すれば、ほとんどの症状は改善します。
しかし、影響が長期にわたるものもあります。たとえば、無月経は月経がない期間が長くなると、体重が戻っても月経がなかなか再開しないことがあります。
ダイエットをするときは、偏った食事や食事制限はせず、適正な体重を目指すようにして、低栄養にならないようにしましょう。
低栄養で起こる代表的な症状は、次のとおりです。
- 低身長:成長期のお子さんの場合、体重が減るだけでなく身長の伸びにも影響を与えます。身長が伸びている間のダイエットはお勧めしません。
- 貧血:赤血球を作るための鉄分は、肉や魚などに多く含まれます。ダイエットで食事が偏ると鉄分が不足し、貧血になってしまいます。疲れやすい、息切れなどの症状が出ることもあります。
- 月経(生理)がない:標準体重の80%を下回ったり、急激に体重が減ったりすると、月経が止まることがあります。体脂肪が減ることで女性ホルモンも減ってしまうからです。体重が回復すれば、月経も自然に再開します。
- 骨がもろくなる:体重減少に伴って女性ホルモンが減ると、骨にも影響が出ます。骨折しやすくなったり、若い頃から骨粗鬆症になることもあります。カルシウムの摂取不足によって中学生の頃の骨量が足りないと、大人になってからはもう補うことができません。
- お肌のトラブル:髪の毛が抜けやすい、肌が乾燥するなどのトラブルが起こります。手や足が黄色くなることがあります。
- 便秘
- むくみ
- 疲れやすい
- 冷え症
- 集中力の低下
- イライラ、抑うつ:摂食障害では、イライラなどをコントロールするために、食事制限や過食にのめり込んでしまうこともありますが、実際は栄養をしっかり摂ることでこれらの精神症状が改善していきます。
栄養は、身体だけでなく心にとっても必要不可欠なものなのです。
適正な体重を知りましょう
ところで、ダイエットをする場合に目指すべき適正な体重はどの程度でしょうか。
成人では、「BMI(Body Mass Index)=体重(kg)/身長(m)2」で評価します。BMIが18.5未満だと「やせ」です。19を切らない程度の体重を設定しましょう。
次の計算式が目安になります。
ダイエット中でも心がけたい、3つのポイント
- 食事は1日3食、よくかんで食べましょう。
- 栄養のバランスがとれるよう、いろいろな食品を食べましょう。
- 食事は楽しく食べましょう。
摂取エネルギー量より消費エネルギー量の方が多ければ体重は減ります。摂取エネルギー量を減らすことだけに頼ってはいけません。必要な栄養素を十分に摂れる食事をとったうえで、体を動かして消費エネルギー量を増やしましょう。
アスリートの低栄養にも注意
消費エネルギー量を増やせばダイエットには有効ですが、消費エネルギー量に摂取エネルギー量が追い付いていなければダイエットをする気がなくても低栄養になってしまいます。
女性アスリートに見られる無月経は、このエネルギーのアンバランスが原因で生じます。日本でも、女性アスリートの4割に月経異常が見られ、競技によっては1割程度が無月経であるという報告があります。
ダイエットの意思がなくても、ダイエットによる食事制限と同じように低栄養になる可能性があります。そして、低栄養はスポーツのパフォーマンス低下にもつながるかもしれません。スポーツをしているお子さんがいらっしゃったら、食事の量や内容、月経の状態なども気にかけてあげてください。
毎日の食事に困ったら
新型コロナウイルス感染症の収束はまだ先になりそうです。家計への影響が出ているご家庭もあるかもしれません。
「ダイエットをするつもりはないけど、お腹いっぱい食べられない、食べさせてあげられない」とお困りではありませんか。
栄養は身体をつくる土台です。毎日の食事に困ったら、一人で抱え込まずに相談してみませんか。食料支援を行う団体が各地にあります。「フードバンク」「食料支援」などのキーワードで検索してみましょう。
最後に
この投稿は、「シンママStyle」というサイトに掲載していたコラムを一部修正したものです。
このコラムを書くきっかけとなった、無月経で受診されたお子さんは、その後無理なダイエットから離れることができたそうです。月経も再開し、笑顔が戻ったと聞いております。
「ダイエットしよう」と思った時は、安全で健康的なダイエットを心がけてください。くれぐれも、体調を崩すようなことがないように。体力が落ちていると、感染症にもかかりやすくなります。
謝辞
「シンママStyle」は2021年9月末をもって閉鎖されることになりました。「シンママStyle」の編集長をはじめとして編集部の皆さんには、Mimosaの活動理念にご賛同いただき、コラムを書く機会を与えていただきました。
また、Mimosaのホームページ読者の皆さんの健康にお役立ていただくため、コラム原稿の再掲を快くご承諾くださいました。ここで改めてお礼を申し上げます。