子どもに伝えたい、性そして生殖のこと

diligent small girl drawing on paper in light living room at home

ご家庭で、お子さんに対して、性に関する教育をされていますか?

性教育は、幼児期から始めていくのが理想的です。小さい頃の方が素直に話を聞いてくれるだけでなく、性教育はお子さんを性被害から守ってくれるからです。

そこで今回は、

  1. 小さい頃から始める性教育のメリット
  2. 子どもたちの「ドキッと質問」に答えるための心がまえ
  3. 幼児期の性教育で伝えたい内容と伝え方
  4. シンママ必読!男の子に対する性教育

について解説します。

小さい頃から始める性教育のメリット

その1 自己肯定感が高まり、自分も他人も愛せる人間になる

科学的に正確な情報は、子どもの身体への興味を引き出し、身体を大切にしたいと思う気持ちを育てます。自分の身体を大切にすることが、自己肯定感につながります。

その2 性犯罪の被害者、加害者にならない

性に関する知識がないと、「嫌だな」「何かおかしい」と思っても、「きっと勘違いだ」「自分が悪いんだ」「自分が我慢しなきゃ」と思いこんでしまうかもしれません。

年齢が小さいほど、「自分が悪いんだ」と思ってしまいがちです。

その3 低年齢の性体験・妊娠・中絶のリスクを回避できる

世界的な研究で、適正な性教育には、初体験の年齢があがる、パートナーの数が減る、望まない妊娠を防ぐ、などの効果があることが分かっています。

性教育は、「寝た子を起こす」ものではありません。

子どもたちの「ドキッと質問」に答えるための心がまえ

ここで言う「ドキッと質問」とは、

「僕のおちんちんが大きくなったの、なんで?」
「〇〇ちゃんとチューしたよ」
「赤ちゃんはどこから来たの?」

などなど、聞かれたら返答に戸惑ってしまいそうな質問のことです。

子どもが自分の体に興味を持つことは当然であり、5歳までに8割の子どもが聞いてくるそうです。

子どもから質問があるときこそ、性教育の絶好のチャンスです。このチャンスを逃すと、子どもは性に対してネガティブなイメージを持ち、もう聞いてこなくなるかもしれません。

そこで、「ドキッと質問」に対応するための魔法のことばを覚えておきましょう。

「いい質問!」

ドキッとした気持ちを隠して、子どもからの質問を受け止めてあげられる言葉です。

質問の内容にすぐに答える必要はありません。「調べておくから後で答えるね」と伝えればOKです。忘れたり受け流したりせず、調べたことを教えてあげましょう。

幼児期の性教育で伝えたい内容と伝え方

「プライベートゾーンは、自分にとって大切な場所である」

ということを、徹底して教えましょう。

プライベートゾーンは、「口」と「水着で隠れている場所」をさします。
具体的には、性別にかかわらず、口、胸、性器、おしりです。

自分のプライベートゾーンを見せてとか、触らせてと言ってくる人は、危険な人です。自分のプライベートゾーンを見せたり触らせたりする人も、危険です。
危険な人に出逢ってしまったら、大声を出して逃げましょう。そして、信頼できる大人に助けを求めましょう。

また、自分のプライベートゾーンを見せるようなことはしてはいけません。
プライベートゾーンが恥ずかしい場所だからではありません。プライベートゾーンを見せることが恥ずかしいことであり、危険なことだからです。

シンママ必読!男の子に対する性教育

1.自分の体を知り、大切にする

小さなうちに、体のいろいろなパーツの名前と役割を教えましょう。

自分の体に興味を持つことはごく自然なことです。その機会に、正しい名前を教えることで、体のことを理科の授業のように伝えやすくなります。

そして、それぞれのパーツが、自分が生きていくのに必要であること、大切であることを教えましょう。

プライベートゾーンだけを教えようと思うから、難しくなります。体のことを説明した書籍などを用いて、心臓や肺などのさまざまなパーツと一緒にまとめて、すべて大切だというスタンスで話題にしてはいかがでしょうか。

2.清潔を保つ

ある程度の年齢になったら、お母さんとは言え、子どものプライベートゾーンには触りません。だから、性器も自分でキレイにしてほしいものです。

陰茎、亀頭部は成長とともに大きくなります。小さい頃には包皮にすっぽり覆われていた亀頭部も、いずれは顔を出すようになります。常に顔を出す状態である必要はありませんが、早い段階で包皮がむけるようにしてあげましょう。最初はちょっと痛いかもしれませんが、繰り返していれば皮膚がのび、最終的に亀頭が出るところまでむけるようになります。

陰茎を洗うときのポイントは、陰茎の包皮をむいて洗うこと。むかないままだと、垢などが亀頭の周りに溜まって炎症を起こすことがあります。

そして、むいた包皮は、しっかり元に戻してあげること。戻さないままだと、きゅっと締まって戻らなくなることがあります。

包皮をむいていない男の子は、包皮が尿道口をさえぎり、おしっこがまっすぐ飛ばず便器や周囲を汚してしまうことがあります。また、亀頭部と包皮の間におしっこがたまって不潔になりやすいです。包皮をむいておしっこをするように教えてあげてください。

3.第二次性徴を理解する

思春期になると、大人の体になるための変化が起こってきます。体つきの変化、声変わり、陰毛が生える、など。そして、生殖機能の発達として、精通と初経を迎えます。

これらの第二次性徴の変化については、学習指導要領によると小学4年生で学びます。子供によっては、その前に変化が起こる子もいます。適宜、教えてあげてください。当然、自分の性別だけでなく、両性の変化を知っておくことが大切です。

月経(生理)…ヒトの赤ちゃんは子宮の中で育ちます。子宮の内側の膜は、赤ちゃんの卵のベッドのような役割を果たしています。ヒトの女性は、毎月子宮の膜をはがすことで、赤ちゃんの卵が来るタイミングで新しいベッドを用意しています。月経は、このはがれた膜とはがれたときの出血が腟を通って体の外に出てきたものです。初めての月経を初経(初潮)といいます。

精通…ヒトの男性は、赤ちゃんの卵を作るために自分の精子を女性の体内にある卵子に届ける必要があります。精子は、陰のうの中にある精巣で作られます。精子は、精管という管を通って、陰茎の中の尿道まで送られて体の外に出ていきます(射精)。精通は、精子が初めて尿道の外まで通って出てきたことがわかる、いわば開通式です。精通があってからしばらくは、練習中のため、自分が意図していないタイミングで精子が出てしまうことがあるかもしれません(夢精)。

どちらの変化も大切なこと、初めはすこし戸惑うことがあるかもしれないけど知っておけばきちんと対処できること、自分自身だけでなくお互いの性の変化を尊重してあげることを伝えてあげましょう。

また、自分の下着に血液や精液がついたときは、自分で下洗いをすることを教えておきましょう。いざ月経や精通が始まったと分かったら、「大人になったね、おめでとう」という態度で見守ってあげてください。

4.正しいマスターベーションを知る

マスターベーションはセックスと射精の練習です。将来、子どもをつくるための準備です。マスターベーションをすることは、当たり前で健全なことです。マスターベーションに対して、恥ずかしさや罪悪感を抱かせないように配慮しましょう。

マスターベーションをする時間と場所を担保してあげましょう。子どもの部屋に無断で入らない、入るときはノックで知らせる、トイレやお風呂などの滞在時間に言及しない。

ちなみに、男の子のマスターベーションは、自分の手でペニスをこすり、亀頭部を刺激して射精に至ることです。床などに強くこすりつけるような方法は間違っています。将来セックスしようとしたときに、腟への挿入や射精ができなくなってしまう恐れがあるため、注意が必要です。

まとめ

性教育の目的は、望まない妊娠を避けることや性感染症の予防にとどまりません。自分の心身を大切にすること、同様に相手の心身を大切にすること、非暴力やジェンダー平等など、多岐にわたります。これらの知識とスキルは、小さい頃から繰り返し伝えていくことで、しっかりと身につき、実を結んでくれます。

さぁ、お家での性教育、始めてみませんか?

おススメの本

最後に、お子さんと一緒に読む本・絵本としてオススメの本をいくつかご紹介します。

  • 幼児期向け
    • おちんちんのえほん(山本直英・著 さとうまきこ・絵、ポプラ社、2000年)
    • ママもパパも知っておきたいよくわかるおちんちんの話(岩室紳也・著、金の星社、2013年)
  • 思春期向け
    • 男の子が大人になるとき(岩室紳也・監修 中村光宏・絵、少年写真新聞社、2011年)
    • メグさんの男の子のからだとこころQ&A(メグ・ヒックリン著 三輪妙子・訳、築地書館、2004年)

最後に

この投稿は、「シンママStyle」というサイトに掲載していたコラムを一部修正したものです。

シングルマザーの皆さんに限らず、お子さんへの性教育の必要性を感じていても実行するのは難しいと感じている方は少なくありません。
性教育は「性」のことだけを教えるものではありません。1回で終わるものでもありません。
お子さんと一緒に、少しずつ性と生殖のことを学んでいきましょう。

謝辞

「シンママStyle」は2021年9月末をもって閉鎖されることになりました。「シンママStyle」の編集長をはじめとして編集部の皆さんには、Mimosaの活動理念にご賛同いただき、コラムを書く機会を与えていただきました。
また、Mimosaのホームページ読者の皆さんの健康にお役立ていただくため、コラム原稿の再掲を快くご承諾くださいました。ここで改めてお礼を申し上げます。